ヒカリ
これもおかしな事なのかもしれないけれど、私は正人さんに抱かれたことがない。

正人さんとお付き合いを始めた頃、私は19歳だったわけだけど、とっくに経験はしていたし、そういうことに対して、特に貞操観念もなかった。

正人さんが私に指一本触れてこないことが不思議でもあったけど、もしかしたら私を処女だと思ってるのかもしれない、とも思った。

だから、逆に悪いなぁ、とさえ思った。

19歳で処女じゃなくてごめんなさい、と。

だけど、結婚してもう2年も経つのに、未だにそういった関係にならないのはさすがにおかしいかもしれない、と思う。

もしかしたら、正人さんの年齢的に厳しいのかもしれない、と思ったこともある。

だけど、相談する友だちもいない私にとっては、なにがおかしいのかももよくわからず、なんとなく今に至る。


それでも不思議なことに、私は正人さんから愛されているという自信だけはある。

それは、私の名前を呼ぶときの優しい声や、私を見る時の目尻のしわで分かるのだ。

私は正人さんに、必要とされてここにいる。

その安心感は、揺るぎなく強い。





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