「 こちら、放課後生徒相談部! 」
1.  「初仕事です、任せてください!」

HRが終わり、アタシは一番に立ち上がると急いで「生徒相談室」へと向かった。


【あなたのお悩み、必ず解決します】


そんな胡散臭い貼り紙が目印のこの教室―――生徒相談室のアタシはがら、と勢い良く扉を開けて、今日イチの笑顔をする。


「こんにちは!綾人センパイ、」


こちらに背を向けるようにソファに腰掛けた1人の少年は、こちらを振り向く。


灰色の揺れる髪、太陽を浴びて更に透き通る白い肌、そして吸い込まれるような深い黒い瞳に切れ長の目をした少年―――彼が、氷室綾人(ひむろあやと)。


アタシ、佐々木千和(ささきちわ)は綾人センパイが部長を務める「ボランティア部」の部員の1人だ。


活動は主に校内が多く「地域向け」ではなく、「生徒向け」である。活動も何と言うか、正直地味である。


みんなが興味を持たないせいか、部員は現在アタシとセンパイの2人だけ。


事実、ワタシが入部したのはつい先日。それまでこの部活の存在さえ知らなかった。


「佐々木さん、もう少し静かに」


優しく咎める彼に、えへへと笑いながら教室へと入った。アタシがカバンを乱雑に中央の机に置いていると、彼は立ち上がりこちらへと歩み寄ってくる。


「こら」と言いながら苦笑いして、教室中央に置かれたパイプ椅子に腰かけた。




「――――じゃあ、始めようか」



今日も放課後、アタシの一番大好きな時間が始まる。
< 1 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop