強引社長の甘い罠
 開いた両の手の平を胸の前に上げて松尾さんが謝ると、祥吾はフン、と鼻を鳴らして三枚目のお好み焼きをひっくり返した。
 私はそんな祥吾を赤くなった顔のまま、じっと眺めていた。心なしか、祥吾の顔もうっすらと赤くなっているように思う。やだ、本当に? 彼は嫉妬していたっていうわけ?

 さっきまで喧嘩腰だったことなどもう忘れて、今はただ、急に祥吾がかわいく思えていた。八歳も年上の彼なのに、私への独占欲は子供のようだ。それが嬉しかった。くすぐったくて、愛しい気持ちでいっぱいになる。

「祥吾……」

 小さな声で呼んだ。

「何だ?」

 お好み焼きにソースを塗って青海苔をかけていた祥吾が、いったん手を止めて私を見る。不機嫌だった彼はどこかへ行ってしまったみたい。唇を引き結んで頑なに表情を崩さないようにしているけど、うっすら赤くなった顔はごまかしようもなかった。

「あの……、ごめんね?」

「もういいよ」

 ぶっきらぼうに答えた祥吾だけれど、その響きは優しかった。祥吾が上手に焼いてくれたお好み焼きを三人で味わいながら、この意外な“デート”を私は思った以上に楽しむことができた。
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