強引社長の甘い罠

噂の婚約者

 翌週の水曜日。出社してすぐ、私は数週間前の自分の行動を呪った。
 改めてあの時エステのモデルを引き受けたのは間違いだったと思わざるを得ない。祥吾に張り合う形で思わず引き受けてしまったけれど、その後こんなに居心地の悪い思いをすることになるとは、考えてもみなかった。

 二日前、私は引き受けたモデルの件で『エステティックサロン・ミュゼ』に赴いた。サロンのスタッフはオーナーも含めて全て女性だということは鈴木課長に聞いて知っていたけれど、撮影してくれるカメラマンも女性だったのは幸運だった。

 この事実を知ったとき、私が撮影に臨むにあたって女性の方が安心だということ以外にもホッとした理由があった。
 カメラマンが女性なら、祥吾も少しは納得してくれるだろうと思ったのだ。この件について、彼があまり快く思っていないことは知っていたし、その理由について聞かされたときは、やっぱり私が軽率だったと反省したから。同時に彼の気持ちが嬉しかった。彼に大切にされている気がしてくすぐったくなった。

 皆が忙しく立ち回る中、私だけが撮影用の白いビキニを着なければならなかったことについてはかなり恥ずかしかったけれど、いざ撮影が始まってしまえばどうということもなかった。マッサージはとても気持ちよく、撮影に関して多少あれこれと指示された以外は思ったよりもリラックスできていたと思う。だから撮影が終わったときは、無事に役目を終えられた満足感でいっぱいだった。撮影した画像データを二、三日後には送ると言われたときも、これで予定どおりページが作れそうだと思っただけだった。
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