強引社長の甘い罠
「唯、友達と飲んでんの?」

「え? うん、そうだけど……」

「じゃあ、もしかして彼女がそう?」

「え?」
 
良平が頭を右に傾けて示した先に、皆川さんが見えた。背の高い良平の陰になっていて、全然気付かなかったけど、良平が少し体をずらすと、皆川さんが可愛らしい笑顔を見せていた。

「よかった~、七海さんが帰ってなくて」

 皆川さんはほっと息をつくと、良平を見上げた。

「はじめまして。七海さんと同じ会社の皆川です。七海さんのお知り合いですか?」

 小首を傾げて尋ねる皆川さんは、可愛らしいのに全然媚びた感じがしない。私はすぐに二人を紹介した。

「良平、彼女は会社の後輩の皆川ルリさんよ。皆川さん、こちら私のイトコで相模良平。仕事でアメリカに行っていたんだけど、一時帰国中なの。」

 私が紹介すると、良平が「よろしく」と言って二人は軽く会釈をした。

「じゃあ、俺も戻るかな。大学の仲間と飲んでるんだ。また連絡するよ」

 そう言って良平は皆川さんに「またね」と微笑むと、背中越しにひらひらと手を振ってテーブルの方へと戻って行った。
 良平の広い背中が細長い廊下を曲がったところで、私は皆川さんを見た。
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