不機嫌な彼のカミナリ注意報2
「私、あの人と別れたの」

 ――― 知るかよ。
 なぜ俺に、思い出したくもないことを思い出させるようなことを言うのか。
 昔もそうだったが、勝手な女だ。

「ねぇ、あなた今……誰か好きな人がいるの?」

 視線を合わせた途端、なにを思ったのかいきなり栞がそう問いかけた。
 その瞬間、屈託のないアイツの笑顔が頭に浮かんだ。

「関係ないだろう」

 仕事とも、栞個人とも、今は関係ないことだ。
 俺が誰を好きで、誰と付き合っていようが。

 ボソリとつぶやくように言った俺の言葉を聞くと、栞はうつむいて視線を床に落とした。
 俺はそれを見て、再び栞に背を向けてエレベーターへと歩き出す。

 受付のふたりからも俺へ視線は突き刺さったままだが、無視してそこを通り過ぎた。

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