不機嫌な彼のカミナリ注意報2
「そうだよな。ごめんね、緒川さん」

「あ、いえいえ」

 苦笑いを浮かべ、そそくさと染谷さんが資料室へ行くためにマーケティング部をあとにした。

 正直、助かった。
 私は今、面倒な入力作業の真っ最中で、できればそれを中断したくはなかったから。

 それに、笹岡さんの言うとおりだ。
 資料室には以前一緒に行って、一通り説明はしておいたからひとりで行けるはず。
 私がまた同じように説明する必要はいらないだろう。

「ありがとうございました」

 染谷さんが出て行ったあと、隣の笹岡さんに笑顔でお礼を述べる。

 染谷さんと笹岡さんは同期で同い年だそうだ。
 うちの会社は大きいから、今まで直接的な面識はなかったらしいけれど。

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