龍泉山の雪山猫
青い花の咲く月夜
ゆっくりと、光がおさまっていく。周りの木々が見えてきて、最後には白い光が一箇所に集まった。そして、だんだん薄くなる光の中には龍が一頭立っていた。

龍は目を閉じたまま銀色の鉤爪を地面に食い込ませた。そこに生えていた草が白く凍りつく。龍の鱗は空の色のように青く、長いたてがみは白。銀色の角が頭から二本生えている。小さな宝石のように輝く雪の結晶が龍の周りを囲んでいた。
とても、綺麗な龍だった。


一度大きく息をついてから目を開けた龍。その龍の瞳は澄んだ青色だった。


彼はゆっくりと体を動かし、自分の鉤爪を見る。そして、後ろに目をやったと思うと、自分の体を見つめた。

「戻れた...。」
龍のつぶやいた声はアオの声だった。
「俺、龍に戻れた...。」

「アオ...?」
わたしの声を聞いて、こちらに顔を向ける龍は静かに頷いた。

「ああ...。戻れた。戻れた!サチ、お前のおかげだ。礼を言う!」

アオはものすごい速さで木々の間をくぐり、空に昇った。美しく宙を舞うその姿は、楽しそうに水浴びをする鳥のようだった。雪の結晶がこぼれだして、わたしの周りに降ってくる。空気が冷たい。

アオはしばらく空を飛んだ後、風のようにわたしのところに戻ってきた。そして、冷たい空気が足元をかすったかと思うと、わたしの体が突然中に浮いた。
「わ!」
驚いて手を伸ばすと、アオのたてがみに触れた。わたしは慌ててそのたてがみを握る。少し冷たい。だけど、人の髪のように柔らかいたてがみだった。


「しっかりつかまっていろよ。」
アオはわたしを背に乗せて、空に舞い上がった。







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