空まで届け
そして、泣き叫ぶ私を置いて
お母さんは逝ってしまった。
たくさんのおじさん達がお母さんを
火の中へ持っていった。
「これからしばらく待機してもらいます」
知らないおじさんがまた話始める。
お父さんは私に手を差し伸べたが、
私はその手を振り払って待機室へと
歩き出した。
待機中はコーヒーを買いに行く人、
煙草を吸い始める人、
折り紙やゲームをする子供達など、
たくさんの人がいた。

私はその人達さえ嫌いになりそうだった。
みんなお母さんのお友達じゃないの?
なんで そんなに平気な顔していられるの?
ひとつの命がなくなったんだよ?
「小春…」
名前を呼ばれて振り返ると、
ココアを片手に持ったお父さんがいた。
「…飲むか?」
信じられない。こんなときにそんなこと
できないよっ!そういう言おうとしたとき、
「小春。みんなな、お母さんがいなくなって
悔しいんだ。悔しいし、悲しいんだ。」
「じゃあ、なんでみんなこんなに
くつろいでるの?もうわかんないよ…」
「お母さんを悲しませないためだよ。
平気なふりして、みんな心の中で
泣いているんだ。小春にも
いつか わかるさ。」
そういうとお父さんはココアを缶を
開けた状態にして私に渡し、
その場から消えていった。
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