ツンデレ専務と恋人協定

そう思って大人しくデパートまで付いてきたけど。

専務はデパートの中をスタスタと慣れたように歩く。

私はこんな高級ブランドが入ったデパートなんて来たこともないのに。

「あの専務」

「会社以外は名前で呼べよ」

名前で呼べって言われたって、今はまだ仕事中だし。


「いえ、仕事中なんで」

「じゃ、上司命令！会社以外では名前で呼ぶように」

こう言われたら仕方ないよ。

専務って何だかんだ頭がいいと言うか、人を扱うのが上手な気がする。


「畏まりました。は？」

「…畏まりました」


なんか契約の事と言い、うまく扱われてるな。

そう思いながらも上司命令に従うことにした。


「麻生李人さん」

「フルネームかよ！」

「麻生さん？」


専務は不満そうな表情で私を見てくる。


「…李人さん」

「別に呼び捨てでもいいけど」


そう言った専務は満足げに微笑んだ。