骨による骨のための狂想曲
骨をガチャガチャいわせて、ベッドで眠る男に近寄る。首筋に噛み付いて血を一滴残らず啜り出す。そして、お風呂場へ運んで解体作業。
彼もあたしも、慣れたものだ。
「おう、そっちの関節外せ」
「ん、りょーかい」
骸骨が人体を解体するなんて……滑稽なような、怖いような……。そう滅多にお目にかかれない光景だろう。
「よし、出来たぞ。こいつは……煮るか? 焼いて脂を落とすか?」
「ん、面倒だからこのまま食べちゃう」
いっただったきまーす、とむしゃぶりつくあたし——を、ふいに彼が突き飛ばした。
「やっぱり、やだ。お前が他の男を食うなんて……耐えられん!」
え、何をいまさら……そう思ったのが、伝わってしまったらしく、彼がヒートアップした。
「だめだめ! やめろ、中止!」
そういって彼が、あっという間に男の肉を食べてしまった。
「あーん、せっかくの獲物だったのに……」
しょんぼりするあたしの頭蓋骨を、彼が得意げに叩いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
結局あたしたちは『人間の肉を食べたら人間になれる』という、特異な体質のままだ。
しかし彼は骨としての生き様が気に入ったらしいので、ほとんど食餌もせずに、一年の大半を骨で過ごしている。
あたしは普通の人間としての生活を送らないといけないので、人間の姿でいることが多い。自然と、人を狩る回数も増えたし、地下の骨格標本も棚の骨粉も、ずいぶん増えてきた。
「そろそろ、引っ越すか……。このあたりでの若者の不審な失踪が目立ちはじめてきた。ネットで話題になってるぜ。若い女が大学生誘ってホテルに入って行くのを見た、って」
パソコンに向かっていた彼が、そう呟いた。
「引っ越す前に、目撃者は始末しておきましょう。骨まで食べてしまえばいいわ」
「ああ、そうだな。それからお前は、少し姿を消しておいた方がいいだろう」
「そうね」
骸骨の彼が、あたしに絡みついてきた。
「久しぶりに、ゆっくり時間をかけて食ってやる」
骨が、あたしの服を脱がせ、骨が、あたしの肌の上で踊る。骨が、あたしを食べて、あたしは骨になった。
それから数日後、あたしは段ボール箱に詰められて、トラックの荷台にいる。
あたしたちが引き起こした『連続若者失踪事件』がマスコミに取り上げられてしまい、まずいと判断した彼が、急いで引っ越し先を探したのだ。