【完】千鳥の舞う花火。








この日俺達は、千鳥を連れて病院の中庭で遊んだ。



体調の良い千鳥と、まるで小さな子供のように鬼ごっこ。



そこまで広くない中庭を駆け回る千鳥の表情が、本当に煌めいていた。





その笑顔を忘れないように、俺は必死に脳内へ記憶する。





千鳥が生きているという幸せ。



……手放すのが、怖い。





「昴タッチー! 次は昴が鬼ー!」





今平然と笑っている千鳥は、俺以上に死を恐怖としている。



泣き虫なくせに、いっちょ前にそれを隠そうとして。





「っ、待てーー! 千鳥ーーっ!」





唇を噛み締め、涙が零れそうなのを我慢して同じように中庭を走った。





百合がジッと、こっちを見ていることにも気づかずに。








< 47 / 121 >

この作品をシェア

pagetop