続 音の生まれる場所(上)
プロローグ

君によせて

「坂本さん…お元気ですか?」

手紙を書くように写真の彼に話しかけた。

送別会の夜、楽団員全員で撮った写真。

中心にいる彼。

キレイな弧を描いた形のいい眉。

切れ長の目。高い鼻。

スッキリした顔立ちで、どことなく王子様みたいな感じ…。


あの夜…頑張っての意味も込めて送ったエール。

貴方にまた会えるって、何故だかそう思えた。

でも…それって、きっと私だけの思い。

何も始まらないまま終わった恋を、認めたくなくなかっただけ。

ホントはもう…会えないって分かってる…。

音の世界にいても、二度と会うことはないと思ってる…。

だけど時々、思い出してしまうの…。

貴方への淡い気持ち。

子供の頃みたいな気持ち。

語りかけてみたくなる…

坂本さん…今…どうしていますか……って。
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