私の弟がヤンデレ過ぎて困る。






「………あの、ニノマイさん。どうやったら、こういう風になるのかな?」


保健室のゆるふわマスコット及び先生の、森本先生が顔を引きつらせて、私に問いかけた。



「……左腕の骨折には至らない鬱血、頭を強打して意識を失ったとみえる、彼の状態…一体どうやって説明してくれるんだい?」


森本先生の目元がピクピク動いている。多分、驚きと訳の分からなさが混ざってどういう、表情をして良いのやら分からず、おかしくなっているのだろう。


『……あ、あの…河原君と、私と、ショウで、あの…一緒に、プロレス、ごっこをしていたら、こんな事に…。以後、気をつけます。』

「……………君たち、河原君を虐めてたんですか?」


『…そ、そんなまさか!虐められているのは、私の方じゃ…いえ!河原君を虐めてません!いじめる度胸ありません!』

「…なら、どうして、河原君はここまで、重傷なんですか?一歩誤れば、意識不明の重体で、病院送りなんですよ?」


『…そ、それは、重々承知しています。でも…!あの時は、その…ッ』


「…あの時は、とは…どういう意味ですか?」




ぐっ。もうダメだ。
言い逃れは効かない。そろそろ、頭が真っ白になってきた。
森本先生が、中々食いついてくる。いや、くってかかっているの間違いかもしれないけれど。

でも、ヤバい。

これ以上は、もう。


息詰まる私を見て、ショウは先生との間に、私の前に寄って、先生の事情聴取に参加して答えた。


「…どうして、河原君がこんな状態になったんですか?」

「河原センパイが、テンション高過ぎて、ついはしゃいじゃって、こうなりました。」

「………プロレスごっこというのは?」

「普段、友達の全くいない停学センパイが、停学明けて嬉しすぎて、お祝いに、たまたま鉢合わせになった俺を巻き込んで、屋上でプロレスごっこしよ!って、言ってきたんです。俺としては、センパイと二人でやるのは、ちょっと恥ずかしかったから…おねぇちゃんにも参加してもらったんです。」



「………………………河原さんは、そんな人格の方でしたか?」


「はい。外面では悪ぶってるヤンキーキャラを貫いているんですが、蓋を開けてみれば、物凄い明るくて、可愛い物が好きで、ハジけてる人なんです。今日だって、《停学明けて、チョ~テンションあがるんですけど~。よし!これから、自分の進路に向けて頑張るゾo(`^´*)》と、鏡の前で言ってみたり、可愛いぬいぐるみを抱いてないと寝れなかったり、引き剥がすとガン泣きしたり、メールとかだと【はらたん】って、センパイの事呼ばないと怒るんですよ。《ぷり、ぷりぷり~》って。」






「………………………そう、ですか。」



そう、ですかって、おい!

全然そうじゃないでしょ!


てか、ショウ。河原君の事めたくそにでっち上げて言ってるよね!?

河原君、そんなキャラじゃないし、可愛いぬいぐるみを抱いて寝るイメージよりも、ぬいぐるみを引きちぎって悪人面の方がしっくりくるよ!

はらたんって、なんだ!?
はらたんって!?


そんな呼び方したら、海に沈められるよ!確実にね!

というか、それ…もはや、明るくて、ハジけてる人じゃなくて、痛々しい人か、危ない人か、頭おかしい人!



「…だから、先生。俺とおねぇちゃんは、なんの関係も無いんです。プロレスごっこだって、…俺とおねぇちゃんは、したくなかったのに、無理矢理参加させられたんです。寧ろ、被害者なんです。河原センパイがこうなったのは痛ましい事だけど、自業自得なので、俺とおねぇちゃんはもう帰って良いですか?早くしないと日が暮れちゃうんで。」






「………………分かりました。」


なにが!?


「…今日は、ここで終わりにしましょう。河原さんが目覚めるまで、診なければいけませんから。貴方達は、早く帰って休みなさい。詳しい話は明日、また聞くとします。」



ショウと私は立ち上がり、森本先生に礼を言うと、保健室のドアに手を伸ばした。その時、森本先生が最後に口を開いた。



「…今朝の事が、あったから、てっきり…河原さんへの仕返しかと思って、悪かったね。右腕、お大事に。」



森本先生が、にこりと笑って私達を送り返してくれた。


私達は、先生に一礼をして、その場を後にした。


























私とショウが保健室を去った、3分後、高松先生が凄い勢いで保健室に駆け込んだ。



「…もっ、森本先生…!!早く、職員室に来て下さい!今、巡回してた警備員が【屋上のドアが吹っ飛んでる】って…」






「ハジけ過ぎだろッ!?」

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