夕焼逃避
とある住宅街の隣合う家に、俺たちは生まれた

保育園が同じだったことでいつからか遊ぶようになり、いつからか一緒にいることが当たり前の存在になった

「ねぇ大輝!どこ行く?」

目をキラキラさせて聞いてくる幼なじみの手を取って、遠いわけでも特別なわけでもない近所の公園でしょっちゅう一日中遊んだ。
保育園でも帰ってからも、休日も、俺たちはいつでも一緒だった。
お互いの親も仲良くしていたし、事あるごとに家族ぐるみでいろいろなところに連れていってもらって、俺たちは本当に仲のいい幼なじみの二人組だった。

だけど、そんな毎日も大きくなるにつれて減っていった。

相馬夕陽(そうま・ゆうひ)は生まれつき体が弱く、何度も肺炎や気管支炎をこじらせては入退院を繰り返していた。
小学校の低学年のあいだは学校にも来ていたけれど、中学になるとほとんど学校にも来れないような状態だった。
見舞いに行くと必ず笑って迎えてくれて、俺のくだらない話も興味津々に聞いてくれるのに、その体に今はどんな爆弾を抱えているのかと考えると切なくなった。

「あーあ…学校行きたいな」

白いベッドのシーツの上で、血の気がなく白い肌の夕陽がぼやく。

儚い光景だった。

「仕方ないだろ、倒れたりしたら困るし」
「うん…そうだよね」
「夕陽が来てくれたら嬉しいけどな」
「ほんと?」
「…うん」

照れくさいような会話も、こいつとならできる。
中学生にもなった男同士の友情なんて気持ち悪いだろうかーーーー
そんなことは考えなかったような気がする。

今になって思えば、俺はずっと


夕陽が大好きだった。
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