不自由恋愛シンドローム
せんせ、ちょっと走れる?



「ありがと、慧」

「ん」

土曜日、青山の撮影スタジオの前。

今日はこれから仕事だという姫華を送ってきた。



「ね、キスして?」

こんなところじゃまずい、

誰か(仕事関係の誰か)に見られるかもしれない。



そう思っても、慧は言われた通りにする。

軽いキスじゃ姫華が納得しないことも分かっている。




「ふ・・・・」



姫華の気が済むまで。



「あ・・・ダメだ、もっとってなる」

「仕事だろ?」

「・・・・そうなんだけどね」


名残惜しそうに慧から離れる。




姫華は仕事はきちんとこなす。

絶対に撮影に穴を開けないし、スタイルも完璧に保っている。

元々太りにくい体質だが、美しくしなやかな身体を作る努力をしている。


加えて生来のカンの良さと賢さが姫華にはある。

モデルとしての姫華は、カメラマンにも回りのスタッフにも評判がいい。




慧を自分のものにし続ける為に始めた仕事であり、

本来やりたくてやっている訳でもないはずだ。

それでも自分でやると決めた事は、絶対にやり通す。



強くて美しい姫華。


彼女の、どうしようもない弱さと脆さを、

慧は一手に引き受ける。




「じゃ・・帰りはタクシーだから」

「うん、撮影頑張って」


「終わったら電話していい?

たぶん・・深夜になるけど・・オヤスミだけ言いたい・・・」


「いいよ、何時でも・・・寝てても起きるから」

「うん」



姫華の安心した顔。


それは慧にとって心から大切にしたいと思う幼馴染の姫華なのだった。
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