とあるマネージャー
とある日。その日の平野は顔が死んでいました。

彼女は機嫌が悪い時でも外に出したくない!人に見られたくない!という世間に優しい子でしたが、この日は久々にやばかったです。クラッシュでした。

これは話を聞かないわけにはいかないので、もちろん平野を傷めないように聞きました。

「どうしたの?」
「んー…とね、あのね、」

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同じ日に入部した男子、山田に人づてに告白されたそうです。

中学も違う、クラスも違う、部活のポジションも(マネージャーにもポジションがあるそうです)違う、という接点がない人です。

事実を知った日は四月二十九日。入部届けを出してからまだ二週間弱。山田は一目惚れでもしたというのでしょうか。

例によって顔の写真も見ましたが、メガネのチビな男子でした。

「ブスだったし〜、ツイッターだとテンション高いのに直だと全然暗いし〜」

とかゆうふざけだ発言はもちろんありません。しかしツイッターに関しては事実でした。

「だってこの短期間で私の何がわかったっていうの?意味わかんない!と思って直接聞いたら全部っていうの。」

「しかも同じマネージャーの子から聞いたんだけど、山田の野郎、クラスで付き合うならこの人、学年で付き合うならこの人、先輩で付き合うならこの人、って枠作ってたんだって!その中の学年が私!そんな考えしてる時点で本当に合わない!マジで嫌い!」

「って思ったから本人に言ったの!人を好きになるんだったらもっと真剣に考えろって!そしたらあいつ「うん。そうだよね。でも俺わかんない。好きって何?恋って何?愛って何?そうゆうのを教えて欲しいんだ、平野に」って言ってきたの!直して欲しくて言ったのに!」

「それに例のマネージャーの子にだけ私が好きだとか付き合うならあの人とかって言ってたんだよ?どうすればいいかな、どう思う、って相談してたんだって。本当はその子のことが好きなんじゃないの!?」

「と思ったから言ってやったけど、え〜、ってだけしか言わなかったんだよ!はっきりしろってんだ!」

「それに直接言えないのかって話だよね!人づてって一番意気地なしだよ!せめてラインで言え!ラインでも意気地なしだけど!」

「だから本人にそれ言ったら人を好きになればわかると思うよ、って言ってんの!だから知らねえよ!要求に応えてないじゃん!」

「もう嫌い!あんなやつ大っ嫌い!」

いやーすごい言いっぷりでした。かれこれ三十分はノンストップで、あとからあとからどんどん出てくるんです。

平野は話し終えてすっきりしたのか、終わった頃にはいつものにこにこ顏に戻ってました。

これがもし嫌い、うざい、やだ、などの言葉だけで人に話していたらただの悪口ですよね。冷やかし、からかいともとれます。

平野は、全て、思ったことを山田くん本人に伝えたようです。直して欲しくて、他の人にそうしないで欲しくてです。

人にものを直接言えるってすごいですよね。なかなかできることじゃないですよね。

どうぞ、大切な、嫌いな人にはちゃんと思いを伝えてみてください。





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