ワンルームで御曹司を飼う方法

「……24日は、うちでもパーティーしませんか?」

 パーティーはウンザリだと嘆いた人に向かって追い討ちを掛けるようで申し訳ないけれど。でも私にとっては一年に一回しかないクリスマスパーティーなんだもの。

「さ、ささやかでいいんです。お仕事が終わったらうちでチキンとケーキ食べるだけで。タキシードも着なくていいし、ダンスも踊らなくていいですから」

 むしろ踊られても困るけど。私、ステップなんか踏めないし。

 社長は何回か目をしばたかせていたけど、やがてフッと可笑しそうに口元を綻ばせて笑った。

「チキンとケーキだけじゃパーティーになんねーだろ。シャンパンの1本ぐらい奮発して付けようぜ」

 高慢なんだか庶民的なんだか分からないけど快諾してくれた言葉が嬉しくて、私は満面の笑みを浮かべながら大きく頷いた。

「そのかわりディスカウントのお安いのですよ。まだこれから大晦日やお正月の奮発分もとっておかなくちゃいけないんだから」

「上等上等、むしろドンペリもクリュッグも飲み飽きてるから却って新鮮だね」

 おそらくディスカウントものの数千倍の値段はするシャンパンを飽きたと切り捨てながら、社長はさっきまでの疲れた表情も消していつものように得意そうに笑う。


 そうしてどことなく元気の出た社長が「いってきまーす」と玄関を出て行く背中を見送りながら、私はとても弾んだ胸でクリスマスのことをあれこれ考え始めた。
 
 
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