ワンルームで御曹司を飼う方法


【2】


 ――鳥は、どこへ帰るんだろう。


 高い高い木の枝に作られた巣。それとも誰かの待つ鳥かご。

 けれど、翼を羽ばたかせ吸い込まれるように舞い上がっていく鳥は、自由な空へ帰っていくように見える。

 ――あの子達が本当に帰る場所はどこだろう。


 朝靄のかかる冬の朝。空へ飛び立っていく鳥達を窓から眺め、そんなことをぼんやりと思った。

 朝の光が部屋まで届かない早朝。床に敷かれた布団では、まだ社長が寝息をたてている。

 穏やかな呼吸に合わせてかすかに揺れる長い睫毛。無防備な寝顔をこっそりと眺めながら、触れたい欲求を抑えた。


「……社長の帰る場所はどこですか……?」


 小さく小さく呟いた声は、寝ている彼の耳にも、監視している機械にも、きっと届かない。

 誰にも聞こえない問いかけが静かな部屋に溶けて消えると、私は立ち上がってキッチンへ向かった。

 今日もいつものように、彼のためのホットケーキと野菜ジュースの朝ごはんを作るために。 
 
 
< 142 / 188 >

この作品をシェア

pagetop