ワンルームで御曹司を飼う方法

 とっても窮屈なワンルームだけど、お客さんはなんのかんのとスペースを作りくつろぎながら時間を過ごした。みんなで買ってきた物を食べ、お酒を飲んだりお喋りをしたり。話に入れるか、実はかなり不安だったんだけど、そこは兵藤さんや布施さんが上手に繋いでくれたし、他の人も話してみたら思っていたよりずっと気さくで、私はいつの間にか緊張せずにお喋りを楽しめるようになっていた。

 そんな風に飲食もお喋りも最高潮に盛り上がっていた時。

「ただいまー。って、うわ、狭っ!なんか人数増えてるし」

 待ちに待った結城社長のお帰りに、賑わいはいっそう色めき立つ。

「お疲れ様でした!さあさあ、まずは飲んで下さい!エリ、ビール取って!」

「うわ、外見た!?リムジンいたよリムジン!」

「待ってましたよ社長。あ、私、宗根さんと同じ第二倉庫で働く来栖と申します。是非今日は結城社長のお話を伺いたく……」

「来栖さん、お疲れのところにいきなり硬い話は失礼ですよ。まずは乾杯から」

 みんな程よくアルコールが回っていたせいか、物怖じどころか馴れ馴れしいほどに社長に絡んでいく。無礼講すぎやしないかとハラハラもしたけれど、こういったノリはどうやら社長も嫌いじゃないようで、スーツの上着を脱いでネクタイを緩めると私の隣の席にドッカリと座ってビールを飲み干した。

「ジャンクなメシだなあ、アメリカのダイナーかよ。宗根の作るメシの方が美味いぞ」なんてケラケラ笑いながらピザをつまみ、三沢さんや来栖さんの真面目な質問にも狩野さんの下世話さの混じった質問にも、怯むことなくのらりくらりと交わす。

 そんな光景を、時々飲み物の追加を持ってきたり、テーブルを片付けたりしながら見ていたけれど

「え~じゃあ社長と宗根ちゃんって本当に恋人じゃないんれすか?なーんにも無いんれすか?それって宗根ちゃんに失礼じゃないれすかあ~」

と言う、ベロンベロンに酔っ払った狩野さんの言葉にはなんだか頭の中に氷を落とされた気分になった。

 
< 45 / 188 >

この作品をシェア

pagetop