ワンルームで御曹司を飼う方法


 目つきはちょっとキツイかもしれない。一重の眼光鋭そうなつり目。シャープな輪郭に薄い唇と相まってサッパリと整った顔をしている。ひきしまった表情、とでも言うんだろうか。自然と引き結ばれてる口角やキリリと上がっている眉尻が、この人が常に緊張感を持った生活を送っている事をうかがわせた。

 年は私とそんなに変わらなさそうだけど、この格好や雰囲気。きっとエリートな仕事をしている人に違いない。

 荷物を拾いながら、そんな彼の容姿を思わず上目でうかがっていると。

「……結城物流第二倉庫……?」

 私の社員証を拾い上げたその人が、眉を顰めながら小声で呟いた。そして、どういう訳か私の顔を覗きこみながら不思議な事を尋ねてくる。

「失礼ですが、結城物流にお勤めを?」

「えっと、はい。あの、でも派遣なんですけど」

 なんでそんな事を聞かれたのか分からなくて、私は不審な顔をしながら社員証を返してもらおうと手を伸ばした。けれど。その男性はもっと意味不明な事を私に言ってくる。どこか嬉しそうに口角を上げながら。

「第二倉庫と言えば【ファストフーズ・キッチン】の食材を専門に流通しているセンター。つまり、俺の会社で働いてるのも同じ……だな」

「? なんの話ですか?」

「ああ、失礼。実はこういう者でして」

 男性がスーツの内ポケットから取り出したのは一枚の名刺。よく分からないままそれを受け取って視線を流せば。

「……結城食品グループ【ファストフーズ・キッチン】代表取締役社長……結城充……? ええっ!代表取締役社長!?」

 驚いて大きな声を出してしまった私に、その男性は……この名刺が偽物でないなら結城社長は、鋭い瞳をニコリと細め右手を差し出し握手を求めて来た。

「いやー運が良かった。ここで我が社員にあったのも何かの縁。私、結城充代表直々の頼みをちょっと聞いて頂きたいのですが」

「えっ!私がですか!?」
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