ワンダーランドと春の雪




汽車を降りてまず最初に目に飛び込んできたのは、私の前を行き交う人々だった。

いや、これを人々って表現してもいいのかな。


今私の目の前を、首輪を付けたドラゴンの
ような生き物がのっしのっしと通り過ぎていった。

体には荷物がくくり付けられていて、その上に
飼い主らしき耳の尖ったお兄さんが乗っている。


そのすぐ横をすり抜けるように、猫耳としっぽが生えた男の子が走っていく。


ホームの向こう側では、女の子が次の汽車を
待っているのが見えた。

彼女はサングラスをかけていて、髪はヘビの
ようにニョロニョロと動いてる。


階段の方を見ると、顔中に包帯を巻いた人や、
じゅうたんに乗りながらお菓子を売ってまわるおばあさんなんかもいる。


それらの光景は、私が今の自分が置かれている状況を改めて実感するには充分なものだった。

何だか、ここで行き交う人を見ているだけでも退屈しなさそうだ。
それどころじゃないんだけどね。



さて、ここからどうしたらいいんだろう。

駅が広くてすぐ迷子になりそう。
人も多いし。

イズミくんにちゃんと聞いておけばよかったな。



そんなことを考えながら途方に暮れていると。




「あれっ。こんなところに可愛い女の子が
いるよっ! 」




可愛い女の子か……どんなだろう。




「えっ無視?! ガン無視って酷くない?! 」



無視されてる人かわいそうだな。

自分が可愛いって自覚がないのかな。




「いやあなたに言ってるんだけど?! 」



そんなとき、誰かが急に私の腕を引っ張った。




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