届屋ぎんかの怪異譚



「あたし、ついて行っていいの?」



銀花が言うと、朔は黙って頷いた。



朔の仕事は保之助の亡骸を取り戻すことだけだ。


本当なら、保之助の生前のことなどどうでもいいはずだ。


それを、銀花と一緒に調べてくれるという。



「ありがとう、朔」



銀花は言うと、朔にもらった団子を頬張る。

団子はもちもちとしていてほんのり甘く、自然と笑みがこぼれた。



「まずはどうするの?」と、頬をもぐもぐさせながら銀花が尋ねると、

「まずは地道に聞き込みでもするか」と、苦笑しながら朔は言う。



「葬儀のときにその場にいた人に、保之助の亡骸を持ち去ったやつを見たかどうかを尋ねてまわる。ついでに、生前の保之助のこともな。――行くぞ」



銀花が団子を食べ終えるのを待って、朔は歩きだす。


その隣に並んで、「頑張ろうね」と銀花が笑うと、「単純」と言って、朔は呆れたように笑った。




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