届屋ぎんかの怪異譚
お武家のお屋敷からお姫さんを連れだすなんて命知らずな真似がよくできたもんだと、今さらながらに呆れてしまうけどね。
結局すぐにお家の人らに見つかって連れ戻されちゃったけど、お父上も娘が可愛いんだろうね。
それ以来、お屋敷の中でなら一緒に遊んでもいいと、わたしたちの出入りを許可してくださった。
それが、わたしと山吹が三つの頃。
白檀が四つの頃だね。
それからはいつも三人で遊んだよ。
わたしが五つになって、父母が迎えに来るまで、毎日のように。
わたしが江戸にいなかった十年間、二人がどうしていたかは、わたしは見ていないから知らない。
けれどわたしが十五になって、亡くなったと知らせを受けた叔母の弔いのために江戸へ帰ってきたとき、相変わらず山吹と白檀は仲良しだったよ。
十年の空白のあるわたしには溝が埋められないくらい、二人は仲が良かった。