届屋ぎんかの怪異譚



鳥の鳴く声が家の外からかすかに聞こえる。


青年の看病をしていたら、いつのまにか朝になっていた。


いっそ店を休業にして眠りたいが、銀花は頭をふるふると振って、その考えを追い出した。



己れ一人で薬屋を切り盛りする銀花の生活は、決して裕福ではない。


一日の売上だって欠かしてはならないのだ。



「さてと、お店開けなくっちゃ」



そう言って銀花は立ち上がり、開店の準備を始めた。



以前に客から注文があった分の薬を用意して、在庫の確認をする。


店の戸を開けると、朝の空気を目一杯吸い込んだ。



今日もがんばるぞ、と意気込んだそのとき。


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