届屋ぎんかの怪異譚



「あたしは仕事よ」


「薬屋がこんなところに何の仕事だ」


「今回は薬屋じゃないわ。届屋よ」


「とどけや……? 何だ、それは。おまえ、飛脚でもやってんのか」


怪訝な顔で問う朔に、銀花はむっとして「違うわ」と答える。



「飛脚と一緒にしないでよね。あたしが届けるのは、届けたくてももう届けられないものよ」



銀花の言葉に、朔は再び「何だ、それは」と返す。



その声がどことなく馬鹿にするような響きを含んでいたので、銀花は顔をしかめてそっぽを向いた。



「教えない。妖にも心があることがわからないような人には、言ってもわからないもの」



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