新婚の定義──嘘つきな君と僕──
新神戸に着いてタクシーで会場に足を運ぶと、`ALISON´はステージで立ち位置を確認したり今日の段取りを確認したりしていた。

(あっ、ユウ…。)

数日ぶりに見るユウの姿に、レナは思わず口元をゆるめた。


この間のライブで、ユウが会場に向かってピックを投げたのを見たのは、レナに向かって投げた1度きりだった。

(そう言えば、去年のツアーの時も、1度も見たことないような…。)

もしかして、自分にだけ特別に投げてくれたのかも…と、レナは微笑む。

(今日はどんなユウが見られるのかな…。)


レナはメンバーたちに挨拶をすると、カメラを構えて、リハーサル風景をカメラに収める。

ユウは写真を撮るレナを見て微笑んだ。

(やっぱり写真を撮ってるレナはキレイだ。)



その日のライブも大変な盛り上がりを見せた。

ステージで演奏をするメンバーたちをカメラで追いながら、レナは時々、ステージで楽しそうにギターを弾くユウをファインダー越しに見つめて微笑む。

(どんなユウも好きだけど、やっぱり、ギターを弾いてるユウは最高にカッコいいな…。)

ステージのすぐそばで、レナがユウに向かってシャッターを切ると、ユウがレナに向かってピックを投げた。

レナは手を伸ばして、それをキャッチする。

ユウはそんなレナの姿を見ると、声には出さず口元で何かを呟いてニッと笑う。

(今、ユウ…“好きだよ”って言った?!)

レナはそんなユウに一瞬目を奪われ、真っ赤になった頬を思わず両手で押さえた。

(何これ…カッコ良すぎる…。)

レナはピックをポケットにしまい、再びカメラを構えてメンバーたちの姿を追った。

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