新婚の定義──嘘つきな君と僕──
自分の気持ちはレナにしかないと断言しても、レナにとっては不安の種でしかないだろう。

(知らなくてもいいことを、いちいち知らせて不安にさせることもないか…。)

レナの知らない自分の過去は打ち明けもしないで、自分の知らないレナの過去を詮索するのはフェアじゃない、とユウは思う。

だけど、やけに親しげに話すレナと相川を見たユウの中に、自分の知らないレナがいることへの不安がうまれた。

(オレ、勝手過ぎる…。)


“今のユウがここにいてくれたら、それだけでいい。”


レナの寂しげな呟きが、ユウの脳裏をよぎる。

(今の自分たちが幸せなら…相手の知らないことは知らないままで、知らん顔してやり過ごしてしまえば…お互いに傷付くことは、ないのかな…?)

ユウは、レナの知らない自分の過去を、レナに知らせることはしないでおこうと思った。

(もう、レナを不安にさせて、一人で泣かせる必要なんてない…。)


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