自惚れ男子の取説書【完】
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ピーピーピー

薄暗い病棟に響くアラームを止めると、急いでモニターを確認する。どうやら波形は乱れていない。患者さんが静かに休んでいるのを確認すると、そっと病室を後にした。


「先輩すみません、10号の人何でしたか?」

「大丈夫。心電図鳴ってたけど、体動に反応しただけみたい。異常なかったよ」

「ありがとうございました」

礼を言いつつ、後輩は私が後にした10号室へとそっと入っていく。私に任せるんじゃなく、担当として責任もって看ているんだな…と後輩の成長が嬉しい。

後輩に引き継ぎ灯りの眩しいナースステーションに入ると、樋口先輩が1人黙々と記録を進めていた。

「アラームありがとう。大丈夫そうだった?」

「はい。今、加藤さんに引き継いできました。誤作動なんで大丈夫です」

そっかそっか、と頷きつつモニターを覗くこの人は本当に仕事が早い。かと言って雑でもなく、『過不足ない仕事』というのがしっくりくる先輩だ。
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