自惚れ男子の取説書【完】

「出来っこなかった…だって私…ちゃんと、ちゃんとね…気持ち伝えてない…言えてないの」



小田さんが行ってしまう。

今度こそ本当に私が届かない所に。
終われないまま、もう二度会えなくなるかもしれない。

なんで今まで自分の気持ちを認めてあげなかったんだろう。

忘れられないなら……好きならいいじゃない。無理に消し去る事なんて出来ないんだから。



気付くにはあまりに遅く、自分のバカさ加減に強く唇を噛む。
降り積もる後悔にじわじわと胸が締め付けられていく。


「ちゃんとわかってるじゃない、琴美」

我ながら無様に、ほとんど叫ぶように声を絞りだした。そんな私をたしなめるでもなく、美沙はただ柔らかに微笑んだ。


「琴美、今日土曜日だよね」

「……う、ん……」


柔らかな微笑みの端で何かイタズラを思い付いたように、美沙はにやりと口角をあげた。
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