空と君との間には
「……大事な原稿は机の上に置きっぱなしにしない……」

うわ言のように釘を刺す。


結城から香るグリーンノートの香りが紗世に、万萬を思い出させる。


「万萬詩悠って本名なんですかね?」


「……さあな」

「大学生ぽいですよね~」

「……そうだな」

「めちゃくちゃ字がキレイですよね~」

「……うん」


結城の返事は素っ気ない。


「何で顔を隠してるんですかね!?」


「あ"あ"ーーっ!! うざい …… 休息の邪魔するな。1時間だけ黙ってろ」

ガバッと体を起こし、早口に言ったかと思うと、再び机に突っ伏す。


自棄に機嫌が悪いなと思う。


「麻生さん、少し早いけれどランチに出ましょう。あなた、昼から由樹と出掛けるんでしょう?」


「でも」


「由樹はあの様子だとお昼、サプリメントと青汁くらいしか口にしないわよ」
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