僕は、先生に恋をした
僕は、先生に恋をした⑥

週末


待ち合わせの駅に小走りで向かう潤平

時計を見て、辺りを見渡す

はるかと悠人はまだのようだ


ふうっと一息つく


その時

はるかが悠人の手をひいて
潤平の方へ歩いて来る

悠人『おにーちゃん!』


手を振る悠人
笑顔で手を振り返す潤平

悠人が潤平の元へ駆け寄る

潤平『悠人おはよう』

悠人『おはよー!
   今日ホントに遊園地行くの?』

潤平『そーだよ』

悠人『やった ー!』


はしゃぐ悠人

そんな悠人を見て
はるかも嬉しそうに微笑む


潤平『じゃあ行こっか』

はるか『うん 』

悠人の手を引きながら
潤平がそっとはるかに聞く

潤平『お義母さん達は大丈夫だった?』

はるか『うん、悠人が今日お兄ちゃんと遊園地行くんだって
     すごく楽しみにしてたから…

     お義母さんもお義父もそんな悠人見たら
     何も言えないんだと思う』

潤平『そっか』

――――――――

遊園地


ゴーカートに乗る潤平と悠人

楽しそうにご飯を食べる三人

肩車をする潤平の肩の上で
嬉しそうな悠人


幸せな時間を過ごす三人

――――――――

潤平と悠人がベンチに座って
次に乗る乗り物を決めている

そんな二人を見て微笑むはるか


売店でコーヒー2つとジュースを買って
二人の元に行こうとする


その時

若い女の子二人組が
潤平の方を見て何か話している


『あの人超~かっこよくない?』

『本当だ~!あ、でも子供連れみたいだよ』

『え!若いのに子供いるんだ~!』


その言葉に、潤平の元へ行けず

はるかはその場で立ち止まってしまう

――――――――

潤平とはるかがベンチに座って
コーヒーを飲んでいる

はるかはさっき
二人組の若い女の子が
話していたことを気にしているようだ

メリーゴーランドに乗っている悠人が
二人に向かって手を振る

手を振り返す潤平


潤平『先生、これからも一緒に色んなとこ行って
   もっとたくさん思い出作ろう』

潤平の言葉に
黙ってうつむくはるか

そんなはるかの様子に気付き
はるかの顔を覗き込む潤平

潤平『先生…どうかした?』


はるか『…望月くんの気持ちは嬉しいけど
    その気持ちだけで十分だから

    だからもう…
    こういうのはやめにしましょ

    望月くんはまだ若いんだし
    私みたいな子持ちの年増なんかじゃなくて
    もっと若い女の子と…』

潤平『何だよ…それ』

はるかの言葉を遮るように
怒った口調で言う潤平


潤平『…先生は逃げてるだけだよ』

はるか『…どういう意味?』

潤平『先生は、雅紀さんに罪悪感を感じて
   目の前にある自分の人生から逃げてる』


潤平の言葉に
カッとするはるか

はるか『望月くんに
    私の気持ちの何がわかるの?』


潤平『…わからないよ

   けど、楽しいって思ったり
   幸せって思うことがいけないこと?

   そうやって

   先生は、雅紀さんのことを一生背負って
   生きていかなきゃいけないの?
   
   もっと、自分の人生大切にしなよ』



潤平の言葉に何も言えず
うつむくはるか

その目には涙が溢れて
今にも零れ落ちそうだ

潤平『…ごめん、俺…』


ピピピピピ

メリーゴーランドの終了音が鳴る


涙を拭いて
乗り物から降りる悠人を迎えに行くはるか

そんなはるかを追いかけられず
その場に立ったままの潤平

何事もなかったように
悠人に振る舞うはるか

はるか『悠人、もう帰ろう
    おじいちゃんとおばあち ゃんが家で待ってるから
    さ、おにーちゃんとはここでバイバイして』

悠人『えーもう帰るのー?』

はるか『もう帰るの』


潤平と目も合わせずに

悠人の手を引っ張り
その場を去るはるか

不思議そうな悠人が
何度も潤平の方を振り返る


潤平は何も言えず
二人がいなくなるのを
ただじっとその場で見るしかなかった

そして

一人になった潤平は
ベンチに座り込み

はるかを傷付けてしまったことを
深く後悔していた

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