僕は、先生に恋をした
僕は、先生に恋をした③

望月鉄工所


潤平が作業着を着て仕事をしている

油にまみれ顔も服も汚れているが
生き生きとしながら働いている

克彦『おい、潤平!』

作業を止める潤平

克彦『ちょっとこっち来い!』

潤平『はい』

父親であり親方でもある克彦に
仕事を教わる潤平

その表情は真剣そのもの



休憩の時間

椅子に座ってコーヒーを飲んでいる潤平

そこへ
職場の先輩、楠木が潤平に声をかける

楠木『よう潤平、調子はどうだ?
   お前最近仕事出来るようになってきたなぁ~』

潤平『全然、まだまだですよ…』


楠木が克彦に気付かれないように
周りを見回し

潤平の耳元でコソッと聞く

楠木『それはそうと
   あの美人教師とはどうなったんだよお前』

潤平『…え?』

楠木の言葉に驚く潤平


楠木『とぼけるなって
   めちゃくちゃ美人の先生が担任になったって
   潤平、前に話してたろ…』


潤平『あ、あぁ…いや、どうなったも何も
   そもそも先生は結婚してて子供もいるし…

   旦那さんとも上手くいってるみたいなんで』


楠木『そーか…
   
   けどな潤平
   相手の気持ちがどうよりも

   まずはお前の気持ち、それが一番大事なんだよ
   いーか、よく聞けよ』


そう言いながら
タバコの吸い殻を灰皿に投げ捨てる


楠木『大事なのはな
   タイミング・フィーリング・ハプニングだ!』


楠木が身ぶり手振りで
潤平に熱く語る

潤平『はあ…』


楠木『まずはタイミングだ
   まあ…これは相手が結婚して子供もいるから
   出会ったタイミング的には…
   まあ、しょうがない気にするな』

楠木『次はフィーリングだ
   潤平はその先生と一緒にいて楽しいか?』


潤平『はい…楽しいです』

頷く潤平


楠木『じゃあ、その先生は
   お前と一緒にいて楽しそうか?』

楠木の言葉に

先日のレストランのことを思い出す潤平


楽しそうに笑う
はるかの笑顔を思い出す


潤平『たぶん…よく笑ってたから』


楠木『よし!じゃあ最後は

   ハプニングだ!!』


潤平『…ハプニング…?』

――――――――――

教室


はるか『これを一部ずつ取って回してください』

一列毎にプリントを配るはるか
後ろの席に回していく生徒たち


『すごーい!』
『えーなにこれ!』
『超おもしろそー!』

プリントを見て
ザワザワする生徒たち

潤平のところにもプリントが回って来る

『合宿のお知らせ』

『10月9日 土曜日
長野県白木キャンプ場にて
1泊2日の合宿を行います
つきましては…』


これはまさに昨日、楠木が言っていた


潤平『…ハプニング…』


だが
プリントの下の方を見て
肩を落とす潤平

そこには
当日同行する先生の名前が載っていた

その中にはるかの名前は無かった

ため息をつく潤平

ハプニング

潤平『…じゃなかった』


ざわつく生徒たちにはるかが話し始める

はるか『みなさん
    目を通してもらった通り
    来週の土曜日に合宿を行います

    普段都会で暮らしている皆さんに
    森や自然の素晴らしさを知ってもらうことが
    一番の目的です

    今年は台風の影響で夏休みのキャンプが
    中止になってしまったので
    ちょっと季節外れですがこの日に決まりました
    シーズンオフなので、テントではなくバンガローでの
    寝泊まりになります』


はるかの話を聞いていた生徒たちが
また騒ぎ出す

『同行する先生、教頭と木ノ実先生だって』
『木ノ実先生ってだれ?』
『ソバージュメガネだ!』
『うわー最強コンビじゃん!!』

教室にどっと笑いが起きる

――――――――――

職員室


教頭『ハックシュン!』

生徒たちに噂をされて
くしゃみをする教頭

木ノ実先生『あらやだ!
      教頭先生お風邪ですか?

      …ハックシュン!』

顔を見合わせる教頭と木ノ実先生

――――――――――

教室


はるか『本当なら…
    クラスの担任として私が同行するべきなのですが
    先生には小さい子供がいるので
    今回参加することは出来ません

    でも
    教頭先生と木ノ実先生が皆さんと同行してくれるので
    きっと楽しいキャンプになると思っています

    では、今週中に出欠席を紙に書いて提出して下さい
    
    全員参加して、良い思い出が作れるように
    先生も願っています』

笑顔でクラスのみんなに話すはるか


――――――――――

授業後


洋介の部屋で飲んでいる潤平とタクミと洋介

テーブルの上には
今日配られた合宿のプリントと
空の缶ビールの山


洋介『合宿どうする?』

タクミ『ちょっと面白そうだよな~
    潤平はどうすんの?』

潤平『…せっかくだし行こうかな』

タクミ『お、めずらしく乗り気じゃん』

テーブルの上のプリントを手に取り
ビールを飲む潤平


『全員参加して、良い思い出が作れるように先生も願っています』

授業で言っていたはるかの言葉を思い出す


洋介がそんな潤平を温かい目で見る
もしかしたら
潤平のはるかを思う気持ちに

洋介は気付いているのかもしれない

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