神様の落としもの
【大学2年】

・夏

「やっべぇ~!遅刻だ!遅刻!」

アパートの階段を二つ跳ばしで颯爽と駆け下りていく。

ボロアパートのせいか階段を駆け下りる音がバタバタと響く。

その足音で、大体誰が歩いているのか予想が付くほどだった。

アパートは二階建ての小さなアパートで全部で六部屋ほどだ。

雨の日や風の日は、彼らは大きな音を立てて主張してくる。

「また遅刻ぅ~?行ってらっしゃ~い!」

俺の足音と騒がしい声に下に住む千夏が窓から手を振ってきた。

俺の方が先に家を出るときは、いつもこうやって見送ってくれる。

このアパートに引っ越してきてからまだ3ヶ月だが、アパートの住人には家族のような親近感を抱いている。

「行って来まーす!」

俺は大きく手を上げた後、アパートの下に置いてある自転車に跨った。

ギュッとハンドルを握りしめ、猛スピードで自転車を漕いだ。

7月の自転車はさすがに堪える。

朝と言えども、やっぱり暑い。

俺は汗だくになりながら大学に到着した。
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