冷たい彼-初恋が終わるとき-
「ーー待てよ」
屋上から立ち去ろう背中を向ければ、手首を掴まれた。
痛いくらいに、力を込めて。
爪が皮膚に食い込む。
痛い。
「逃げるなよ、まだ話は終わってねえだろ」
ギリギリと骨が軋む。
痛い。
怒る桐生君に、声が出ない。
「てめえは自分の言いたい事だけ言って、俺の言いたい事は聞かねえのか」
どこか不機嫌な声で呟いて、私の手を引っ張って後ろに引き寄せる。
「…っひゃ」
ぐい、と強い力で反転させられた私は、気付けば桐生君の腕のなか。
背中に回された腕に硬直すれば、桐生君は強く私を抱き締める。