冷たい彼-初恋が終わるとき-





意識し過ぎて恥ずかしさが込み上げて来る。ほんのり赤く染まる頬に、桐生君は目を丸くしてから笑った。爽やかににっこりじゃなく。ニヤリと。




「…へえ。手を繋ぐのすら初めてとはな」

「…う…」

「…ならキスも初めてか?」

「…なっ…!」




軽くセクハラ紛いな質問だ。


顔を真っ赤にさせて狼狽える。


そう言えば私、桐生君とキスしたんだ。ししししし、舌と舌が交わる、あああああの、き、きす…!




「…何厭らしいこと考えてんだよ。顔真っ赤」

「…っう、あ…ち、ちがう!」

「…欲情してんじゃねえよ変態」

「……っ」




今なら羞恥心で地面に潜れる。
もぐらにもなれる。


あのときは場に流されてたし、それどころじゃなかったから、あまり気にも留めなかったけど、あの蕩けるようなキスは確かに私の初めてだった。


あれが、ファーストキス。



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