私は初めから病気だったワケじゃない!!

夕食に!

古文の授業を受けていたら、
古文のk先生は、

「夢と知りせば、覚めざらまし。
せば、ましを緑ね!!」

緑とは、蛍光ペンで、
緑色に塗ってという意味なの!!

「夢と知っていたなら、
覚めなかったのにな〜!!
せば、ましが出てきたら、
気を付けるように!!」

皆がうなずく。

「皆、
漢文のT先生、
知ってる?
おぅ、大体知ってるか!
若いよね〜!!
実はこないだ、
東京の方でも、
一緒なんだけど、
講師用の傘立てで、
T先生、
傘がないと、
探していてな、
それを聞いた漢文の有名なQ先生がな、
キミキミ、
そこは講師用の傘立てだから、
ここに入れてはダメだよ!
って、学生さんに間違えていたんだよ!
k若かりせば、うれしからまし!
kは若かったら、
学生料金で、
買い物できたりとかして、
うれしかったのになあ〜!!
実際は若くないkだけど、
本当T先生、若いよね!」

k先生は、
一気にしゃべる。

私たちは、
せば、ましを
頭に入れながら、
笑って覚える。

本当、T先生、
若く見える。

大御所のQ先生から見たら、
T先生は、
学生さんみたいに見えるのだろう!!

でも……本当の所、
T先生って、
本当に若いのかな?

実は私、T先生ファンとして、
いつも、のど飴の差し入れを
講座後に持っていっていた!!

アイドルの追っかけの心理に近い……。

講師室カウンターの女性たちともお馴染みになっちゃった!?

T先生は、
講座中に、
よく目が合う♪

私を見て、
話してくれている……と、
錯覚しながら、
どこかで、
私だけじゃないんだろうと、
思いながらも、

見てくれるだけで、
ときめきを感じていた。

私だけの先生じゃないんだけど、
講師室に出入りするチャレンジャーが、
滅多に居ないので、
ちょっとだけ、
T先生に近い気分になっていた。

因みに、A氏は、
M先生の筋金入りの追っかけだから、
講師室にも、
M先生の前に現れて、
M先生ファンの質問の助手をつとめている。

A氏が答えられる日本史に関する質問を
M先生に任されて、
代わりに答える事で、
沢山やって来るファンをさばいているのだ!!

そんな人気講師と違って、
T先生には、
私ぐらいしか来ない。

講座に出かける講師方を
カウンターの女性たちと一緒に、
お見送りする時、
夫を見送る妻みたいだと思って、
ちょっと嬉しい♪

今日でとうとう最後の講座だった。

最後の差し入れして、

「ありがとうございました!!」

と、最後の追っかけに来たら、

「夕方、空いてますか?
夕食、一緒にどうですか?」

「えっ!?
本当ですか?」

「この後の講座が終わるまで、
ちょっと時間ありますが……。」

「自習室で、勉強しています♪」

「帰り、遅くなると、
お家の方に、
連絡しておいてくださいね!」

「はい♪」

今日は最終日なので、
T先生にも私の他に、
質問にきた生徒が現れた!

私は、カウンター横に下がって、
カウンターの女性と話して待っていた。

カウンターの女性も、
私のT先生ファンぶりに、
いつも応援してくれていたから、
一緒に喜んでくれていた。

T先生と、
夕食だなんて、
夢じゃないよね!

夢なら覚めないで!!
夢な覚めそ!!

な、そで緑!!

k先生の古文の講義が、
脳内に響く!?

他の質問者が帰り、

ほとんど話す時間がなかったけれど、

「じゃあ、後で、
講師室の前に……。」

「この次の一コマの後ですね?」

「はい♪」

チャイムが鳴って、
皆が、慌ただしく準備を始めた!!

T先生が、

「じゃ、行ってきます!」

と、準備を整えて、
講師室カウンターで、
いつもの言葉をかける。

「先生、頑張って下さい。」

私は、
カウンターの女性と、
一緒にお辞儀をしながら、
声をかけた。

「はい!
頑張ってきます!」

ついでに、他の講師の先生方にも、
お辞儀をした。

「失礼しました。」

と、学校の職員室を出る時みたいに一礼してから、
私は、退室している。

これが、最後か……。

そうだ!!
家に電話しなきゃ!!

私は、予備校の公衆電話をかけに講師室を後にした。
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