ご近所さん的恋事情
瑠璃子は渉よりも早くに起きて、朝食を用意しようとしていたが、渉のほうが先に目覚めたし、食べている時間もなかった。


「ごめんね、ご飯…」


無理矢理泊まらせて、何も食べさせないで見送ってしまうなんて、ひどい女かもしれない。瑠璃子は肩を落としていた。


「大丈夫だよ。最初から、新幹線で食べるつもりだったから。ね、気にしないで。行ってきます」


「行ってらっしゃい。気をつけて」


玄関にパジャマ姿で立つ瑠璃子はもちろんまだ化粧をしていなかった。化粧をしている時よりも若く見えるその素顔に渉は、口付けた。

ほんのり頬を赤くして、手を振る瑠璃子に見送られて、心が温かくなった。結婚したら、毎朝こんな感じかな。悪くない、むしろ最高だ。

渉は夜の失敗を忘れて、軽い足取りでマンションを出たのだった。



三差路を右に行きたいところだが、左へと行く。24時間営業しているスーパーは渉の家からも瑠璃子のマンションからも近い。
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