ご近所さん的恋事情
渉に会いたいと思い、いるかも分からない店の前をうろうろしていて、不審者だと思われたかもと急いで離れた。


「俺に会いたかったのなら、連絡してくれたらいいのに」


「ここの前に通ったときにふといるかなと思っただけで、特には…」


この日は仕事でトラブルがあって、疲れていた。だから、渉に会いたくなったのだ。渉に笑顔が見たかった。でも、他の人もいる前で素直に言うことが出来ない瑠璃子は言いよどむ。


「今度からはいつでも遠慮なく呼んでくれたらいいよ。出来るだけすぐに行くから」


「うん…」


いつでも瑠璃子に寄り添っていたいと思う。どんな時でも自分が一番理解してあげたい。


「おやおや、もしかして二人は相思相愛の仲になったのかい?いやー、そうか、そうか!良かったねー!」


「おお!相思相愛!それは、それは、ごちそうさまだ。よし、乾杯しよう」


店長が相思相愛と喜ぶと、木村が手を叩いてさらに喜ぶ。始まったばかりの恋愛を初々しく思う中年男たちは、必要以上にはしゃぐ。
< 60 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop