この気持ちは、気付かれない。


けど、もうすぐ大学の大学祭がある。そんなことは言ってられない。

うちのサークルも例年通りタコ焼き屋をやるだろう。実際、店の飾り付けの準備も佳境に入ってるみたいだし。なんとなく、行かないでいるわけにはいかない。



〈今日も、準備やってる?〉


翔子に連絡を取ってみて、もし今日もやってるなら顔出しに行こう。全然行ってないしさすがに申し訳ないから。


翔子からはすぐに〈やってるよー!待ってる♡〉と返事が来た。

それじゃあ、授業が終わったら行こう。





最後のコマを真面目に受けて、わたしは差し入れを買ってからサークルに向かった。


「おつかれ〜」

「あっ!皐月!待ってたよ〜…って、あんた大丈夫?」


ん?ドアを開けたとたん、翔子がすごい勢いで駆け寄ってきた。


「なに?」

「また痩せた!?顔色悪いし!ちょ、座りな!」


え…そんな、バレるほど?

もう肌寒くなってきたから長袖着てるし、髪もおろして輪郭とかわかんないようにしてるんだけど…。


「なんかあったの?この間よりやつれてるよ?」

「大丈夫だよ?夏バテから立ち直れなかったのかな、」


あはは、と笑って見せれば、翔子は口をつぐんだ。

「あ、皐月さんだー」と後輩から声をかけられたから、笑って手を振る。それに気づいた翔子がため息をついた。


「…黙ってればあたしが引くと思ってるんでしょ、でも今回はダメ。なにがあったのかは話さなくてもいいからちゃんとご飯食べるよ。今日、この後ご飯食べに行くから。」


きっ、と強い視線を投げられてわたしは思わずたじろいだ。翔子にこんな風に言われたのは初めてだ。


大人しく「わかった」と返しておいたけど、そんなに心配かけるほどやつれてるのか…。


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