この気持ちは、気付かれない。



再び沈黙が流れる。


優衣はまだ戸惑った顔をしていて、本当に気づいてなかったんだな、と思った。


そこで口を開いたのは、山本くんだった。



「…俺は、皐月のことが好きだ。優衣、本当にごめん。今までずっと、隠してきてごめん…」


バッ、と音がしそうなほど勢いよく山本くんが頭を下げた、優衣に、だ。



「…俺は、優衣と付き合い始めてから初めて会った皐月にすぐ惚れてた。だけど、皐月が秋のことをみてるのにも気付いて、自分に望みがないことを悟ったんだ。それで、今の関係を提案した。一番最低なのは、俺なんだ。」



一言一言、噛みしめるようだった。ゆっくりと語られるその言葉には、重さがあった。


「色んなことを、後悔してる。優衣に黙ってたことも、俺のわがままに皐月を巻き込んだことも。…本当に悪かったと思ってる。」



また、山本くんはごめんと謝った。


「弘くん…。」


優衣も少しずつ状況を整理してきて、わかってきたみたいだ。それでも、どうしたらいいのかわからないという風だった。





「…それじゃあやっぱり、わたしたちは別れた方がいいね。一緒にいる意味も、もうないよね。」



困ったように、悲しそうに眉を下げながら優衣はそう言った。

その横で、秋が顔を歪ませている。きっと秋もたくさん言いたいことがあるんだろうな…。でも今は、優衣と山本くん2人の話だ。




「ああ…そうだな。今まで、ありがとう。」



やっと頭を上げた山本くんも、眉を下げて困ったように笑いながらそう言った。



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