私の教官



「いつも通りで良い。


俺がおるから。いけるな?」



心臓がドクドクとなっているのがわかる。



小さくうなずき、車を発進させた。



私が苦手なのは狭路



いつも脱輪させてしまう。



板瀬先生が乗っている。



落としたらだめ、かっこ悪いところなんか恥ずかしくて見せられない。



絶対に落とさない。



そう思いながら狭路に望むと



なぜか通過できていた。



「うまいやん!



自分が思ってるより何倍もうまいで」



初めて褒めてもらえた



しかも板瀬先生に...



心臓が弾んで自然と笑みがこぼれ



緊張が解けた。



あっというまに授業時間は残り3分



板瀬先生と私は席を交代し



板瀬先生の運転で車を止めに行く途中



「中村さんは、良い子やね。


謙虚さが運転にもでてるわ


検定も文句なしで合格やと思うで」



板瀬先生を見ると目が合った。



とっさに目をそらし、



「全然良い子じゃないですよ。



むしろ悪い子です。」



「きれいし良い子やし、癒しやね」



板瀬先生はそうポツリとつぶやいた。



一瞬時が止まったかのようになり



息もできず、なんて返事をすればいいのか
わからなかったので


聞こえていないようにふるまった。



車をとめて外に出る間際



「何かわからないことがあれば


いつでも聞いて、教えるから。


んじゃお疲れ様!」



といって先に出て行った。



体が溶けてしまうくらい熱くなり



しばらくその場から動けなかった。



< 4 / 7 >

この作品をシェア

pagetop