遊園地は眠らない
「ハッ」

雅哉がバカにした笑い。

「お前らバカじゃねぇの? 下沼は印象が薄かったから忘れてるだけだろ。言われるまで忘れちまうくらいの存在なんだよ。記憶が操作されてる、ってなんだよ。笑わせんな」

私は雅哉を見た。

たしかに下沼さんという名前を聞いたからこそ、顔は浮かんでくるが、実際に印象が薄い。

しっかり思い出そうとしても、もやがかかっているよう。

「でも、私は見たの。観覧車でもメリーゴーランドでも、あれは確かに彼女だった」

「お前、イカれちまったのかよ」

あきれたように雅哉が言ってのけると、
「ほら、次行くぞ」
と、歩き出そうとする。


しかし、誰も動こうとはしない。

私も同じように、動こうと思っても足が動かなかった。

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