噎せかえる程に甘いその香りは

好きだった筈の甘い香り。

だけど今は胸焼けしか覚えない。


仄の腕を掴んでリビングから寝室へ向かった。

あの男の存在を誇示するような噎せかえるほどに甘い香りから彼女を引き離すように。


「葵……さ、ん」


窓から差し込む光に薄ら浮かぶ彼女の顔は不安と戸惑いに満ちていて。

だけどその時の俺には安心させてやるほどの余裕も説明の余裕もなくて―――…


彼女は俺の物だと主張するようにその華奢な体を押し倒して唇を塞いだ。




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