噎せかえる程に甘いその香りは

私を見詰め返す香澄さんは酷く同情的に、嘲弄気味に、その緋色の口端を持ち上げた。


『今まで私の代わりをしてくれて有難う。でももう――――要らないわ。』


この香水が無ければ私は香澄さんの代わりになれない。

なのに葵さんは『もう要らない』と言ってその香水を捨ててしまった。

香澄さんの替わりは…私は……




もう、必要ないんだ。




唐突に知ってしまった答えに、心臓がぎゅっと捻り潰される。


―――貴女はもう、要らないの。要らないの。要らない……


甘い香りが身体に纏わりついてそう囁く。


要らない。


その声にせき立てられるように、私は服を纏い、逃げるように部屋を飛び出した。








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