王子様と堕姫様

消えた使用人




屋敷の中からリアが消えた。

それは大きな問題だった。


なぜなら、リアは王子の婚約者であったからだ。


まだ極少数の人しか知らない事実であっても
屋敷内はバタバタしていた。


「どうしよ…私があんなこと…!!」


「いや、僕が何も話していなかったのが悪いんだ…」


エリカが泣き続け、
なんとも言えない空気が広がる。


「いいから探しに行くぞ…!!」


ルイが大きな声で言う。


「この雨だ、まだ遠くへは行けない。」


『マリア様がお帰りになるぞ!!』


別の使用人の声が聞こえる。


今の王子にとってなにより大切なのは
リアの存在であるのは確かだった。


しかし礼儀として、
この国の王子として
やるべきことはしなければならないことがあるのも事実であった。


「見送ったらすぐに向かう。」


三人はそれぞれの道で、
リアを探しに向かった。


「ほんと…オヒメサマだな…」

こう言った王子の顔には
重苦しく焦った表情が大きく表れていた。
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