メルヘンチック·レボルバー
「名前ってさ、自分の親しい人とか、仲良くしたい人に呼んでもらえるから嬉しいものなんだよ?
僕にとってそれは、このマネージャーじゃない」



ゆっくりと幸香の顔を覗いてみる。


綺麗な水分を帯びた瞳が、僕の視界を占領する。



「私は……?」


「僕は幸香と仲良くしたいよ。
だから、幸香の好きなように呼んでくれたら嬉しいし……幸香が、僕がどう呼ばれたいかを当ててくれたら嬉しいかな」



僕は、僕にできる最大限の笑顔を幸香に向けた。


それに答えるように微笑む、幸香の優しさが嬉しい。



「ありがとう……」



これはもしかして、『幸哉』って呼んでくれるのかな……?



「……ねぇ、そろそろご飯作らない?」



あ……、呼んでくれないんだ。



そう思うと、少しかくん、とした気分になった。



でも、明るく笑う幸香を見ていたら、そんなことはもうどうでもいいんだ。



まぁ、いっか……


そんな気分になったから。
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