メルヘンチック·レボルバー
寝ている幸香を起こさないように、そっと立ち上がった。
カーテンを閉めて、暑そうな光を遮る。
――――直射日光の当たらない水平なところに置いて下さい。
「やっぱり、僕の目って最高かも……」
――――接眼レンズを取り付けて下さい。
――――対物レンズを取り付けて下さい。
「寝顔を見るのって2回目だ」
――――レボルバーを静かに回して最低倍率にし、しぼりを開いて下さい。
僕は、ピンク色の頬にそっと顔を寄せた。
そこに軽くキスをして、また幸香を眺める。
「…………ゆ……きや」
ゆっくりと動いた唇。
そんな幸香を見て、僕は思わず微笑んだ。
「ありがとう、幸香……」
少し薄暗い僕の部屋。
その時は明るく、あたたかくなった気がした。
END