もしも私がーcasket in cremtion。

 山の中、人が一人やっと通れるくらいの獣道の横に、谷が見える。
 その反対側は反りたった岩壁が威厳を醸し出してたっていた。圭子はその崖の岩に捕まりながら、細い獣道をゆっくり、一歩一歩進んでいた。
 後ろを見ると、三人の姿は無く

「撒いたんだ」とホッとため息をつくと、突然前方から手を掴まれた。

「!」

 驚いて、手の先を見ると靭が肩で息をしながら「捕まえた」と呟いた。

「っ放してよ!」

「ちょ、暴れないで!」

 振りほどこうとした圭子の手が、岩に思いっきり当たった時

「おい!危ねぇぞ!」

 上から声がして、二人が上を見上げると、永璃と幟呉がもの凄い音と共に振って来た!
 
  ドドドドド ―

 音の正体は――

「な、雪崩ぇええ!?」

 圭子は逃げる暇なく、雪崩に呑み込まれた。

  

  *****


 暗闇が広がる―
 圭子は一人宙に浮いている。
 ふわふわした感覚の中で、ふと記憶が蘇る。
 見覚えのある、懐かしい闇だ。

(半年前、私がまだ、人間だった頃によく見た夢の中の闇……。こうやって漂っていると、光がふと出来るんだ。)

 そう思った圭子の斜め前に光が湧き始めた。
 圭子はおもむろに立って、その光の中へ吸い込まれるようにして入って行った。

 

  *****


 学校の教室の窓際で、私は机に頬杖ついて外を眺めていた。そう、この日は雨だった。
 毎日がつまらなくて、色んな事がくだらなかった。友達はいたし、貧乏だったわけではない、何不自由ない生活のくせに、何処か、何かが不満でしかたなかった。
 ため息が出ない日はなかったの。
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