10年の片想い

タカラモノ








☆NOside☆





凛と美愛が泣いていることを知らない乱馬メンバーは、いつものお屋敷の最上階の例の部屋にいた。

そもそも、乱馬は2人をここに連れてくる予定だったのだ。

勿論、自分たちのことを全て話すまで、この部屋に通すつもりはないが。

この間凜たちをいれた客間になら、通せると思っていたのに。





部屋には、異様な雰囲気が漂っていた。





トウヤはいつもの椅子に座り、分厚い本を捲っている。

だが、目線は上の空で、ただ単にページを意味もなくペラペラ捲っているだけ。

一応言っておくが、分厚い本は決してパラパラ漫画の本ではない。

普通の、字が沢山詰まっている、活字の本だ。





カオリは部屋の片隅で、心を無にしてお茶を淹れていた。

乱馬はカオリ以外全員猫舌のため、熱いお茶はカオリが冷ます役目を持っている。

その方法とは、お茶をひたすらかき混ぜること。

空気と混ぜることで、熱を冷ましているのだ。

カオリはただひたすら、カップに注がれたお茶をかき混ぜていた。

まるで、卵を泡立てているみたいだ。






ソラとウミはいつもの椅子に座り、ボーッと同じ方向の天井を見つめていた。

が、見つめている先は豪華なシャンデリアなので、段々と2人の目はチカチカしてきた。

だけど、2人はシャンデリアを見つめるのをやめない。

今は眩しいという感情よりも、重要なことが起こっているからだ。








< 99 / 131 >

この作品をシェア

pagetop